桐生編STORY
「カラの一坪」にて
1988年12月。東京・神室町。
「も、もう勘弁してくれ……」
地べたに這いつくばり、顔中アザだらけの男が息も絶え絶えに命乞いをする。
そんな男の顔面に容赦ない前蹴りが叩きこまれ、大の字にぶっ倒れた男はそのまま意識を失う。
「……この街で喧嘩売るなら相手を選べ」
蹴りを見舞い、捨て台詞を吐いたのはのはまだ若いヤクザ。
名は桐生一馬。東日本最大の極道組織、東城会の直系堂島組若衆。
まだ二十歳のチンピラだった。
気絶した男の懐から財布を抜き出し、札束を取り出すと桐生はその場を後にする。
四方をビルで囲まれた、わずかばかりの更地……
この場所が「カラの一坪」と呼ばれる、いわくつきの土地であることを桐生はまだ知らない。