桐生編STORY
戦慄の夜明け
散々歌い飲みあかし、夜も白々と明けてきた頃。
「シメはラーメンだろ」
そう言う錦山に連れられ、桐生は勢いで注文した特盛をちびちびとすすっていた。
ラーメン店の色あせたテレビからは早朝のニュース番組が流れている。
徹夜明けの気だるい空気。
ブラウン管の中のキャスターは淡々と事件を読み上げる。
「……それでは次のニュースです。
昨夜11時頃、神室町の一角で発見された若い男性の変死体は激しい暴行を受けており、警視庁では殺人事件と見て付近を捜査中です」
殺人などこの街では日常茶飯事。特に関心があるわけでもなく二人はテレビを眺めていた。
だが、次の瞬間事態は一変する。
「こちらが死体の発見された現場です」
テレビに映し出されたのは、あの「カラの一坪」だった。
「ここって……」
追い打ちをかけるように、被害者の顔写真が映し出される。
「俺が、取り立てた男だ……!」
「おいおい…… お前、マジか……!?」
殺すほど痛めつけてはいないはず……
そう自分に言い聞かせるも、事態は桐生の殺しを物語っていた。
言葉を失う二人。そこへ桐生のポケベルの着信音が響く。
「……早速組からの呼び出しだ」
足取り重く、桐生は堂島組事務所へ向かう……